「あっあっあっ・・・!」
高く、声が漏れた。
頭が煮立つ。
濃い、雄の匂い。
汗と混じって、じんっと躰中が痺れるようだ。
ぼたぼたとはしたない体液がこぼれて。
だけどそれをとどめようなんて思わない。
「ぁんっ・・・いざ、やぁっ・・・!」
求めて差し出した手は、違わず男に捕らえられるから。
「んんっ・・・!」
与えられる口吻けに酔った。
まるで溶け出しそうな、暑い日に。
―― only sun looks ――
例えばきっかけはなんでもないようなことで。
酷く気温の高い夏の日に。
いつもと同じように追いかけて、追いかけられて。
繰り出した拳が、臨也の頬を掠めた。
ぴしり、風圧で切れた片頬から流れる血が、つと汗と混じって頤から滴り落ちる。
例えばそんな、本当になんでもないようなことなのだ。
その滴の軌跡が、ふと目に入って。
ごくりと知らず喉が鳴って、目の辺りが熱くなった。
ジージーと蝉の音がする。
いつの間にか港に程近い、人気のない工場跡地まで来ていた。
伸び放題の下生えが、靴を汚す空き地のような所だ。
ちらと向かい合う位置にいる真っ黒な男に視線を流すと、男もまた静雄をひたと見つめていて。
紅い紅い、禍々しいほどに紅い瞳が、ちらちらと欲の焔を灯して、今にも舌なめずりしそうなほどである。
それに気付いた瞬間に、静雄の中の何かが切れた。
「いざ、やっ・・・!!」
伸ばした手は、男の胸倉へ。
抗われずに掴めた服を、躊躇いなく引き寄せて。
ガチリ、歯と歯がぶつかる。
だが、そんな痛みさえ興奮を誘うだけだ。
いざや。
言葉は、絡める舌にこめて。
重ねた唇から遠慮なく差し入れたそれで、ぬるぬると口腔をなぶった。
歯列をなぞって、頬の内側を舌で押して、臨也のそれと絡みあって。
「んっ・・・ふっ・・・」
鼻から漏れる息は荒い。
角度を変えて、執拗に舌を舌に絡ませた。
吸って、なぶって、なぞって。
真上に近い太陽が、じりじりと頭を焼いて、噴出す汗は留まることを知らず、興奮に煮立った思考も、手も、止まることがない。
火照った躰を、男の細く、だが骨ばった躰に押し付けた。
熱い。
湿ったシャツが肌に張り付いて、互いの熱を余すことなく伝えてくる。
男の躰も熱かった。
カチャカチャとベルトをはずす耳障りな音が二つ。
興奮により震える指で、静雄が臨也の、臨也が静雄のそれに手をかけて。
胸倉を掴んだ手は、男のシャツを、縋るようにいじっている。
だが、覚束ない指では片手ではずせるはずもなく、直にそれもバックルへと向かったけれど。
取り出した互いの象徴はすでに硬く張り詰めていて。
手の中でビクビクと脈打っていた。
「う・・・ぅ、はぅ・・・」
ちゅぱり、大きく音を響かせて離した唇を、男の耳元へ滑らせる。
男のやはり荒い息が、肩をくすぐって、背筋をぞくぞくとした何かが走り抜けていって。
ごくりと、唾を飲み込んで、押し倒した。
男を。
どさりっ、砂を舞い上がらせながら、背中から倒れこむ羽目に陥った男が呻いたけれど、少しも気にせず、腿の上に馬乗りになって、上半身を倒し、引きずり出した下肢に唇を近づける。
腰を突き出した浅ましい格好で舌を伸ばした。
熱く、太く、硬い男のそれ。
赤黒く、雄の匂いであふれている。
「んっ・・・はむっ・・・」
むぐむぐとすっぽり、深くまで口に含んだ。
躊躇いなどあるはずがない。
むしろ望んでいたほどだ。
額から滴った汗がぼたりと男の腹に落ちた。
捲れ上がった黒いシャツの隙間から見える肌が、まるで女のそれのように白く滑らかなことに、喉の奥で笑う。
「ぅっ・・・くっ・・・」
その刺激に、男が息を詰めた。
手でぎゅっと根元を握りこむと、男の手がきしきしする傷んだ、静雄の金の髪を掴んで。
舌先に感じる苦味は、先行する男の焦燥だ。
粘ついたそれに、自らの唾液を絡める。
熱い。
はふはふと鼻と口で息を継ぎながら、男くさい匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
この硬く太いものが早く欲しくて、期待に腰がもぞもぞと動く。
中途半端に脱げかけたスラックスを、身を捩って足から落として。
遮るもののなくなった白い素肌に、太陽の熱が当たって熱い。
「は、ははっ・・・がっついちゃって。シズちゃんってほんと、盛りのついた雌猫みたいだよ、ねっ・・・!」
荒く息を吐きながら、男が嘲るように声をかけてきた。
手が髪をひっぱって、もてあそぶ。
静雄は、ぬるりと舐る男自身から唇を離して、口の端を歪めて笑った。
「何言ってやがんだ、イザヤくんよぉ。こんだけおったてておいて、何が言えるって言うんだ。あ?」
きちゅりと、静雄の唾液と、男からの分泌液に湿ったそれを握る手に、少しだけ力を込めた。
「くっ・・・ちょ、待ちなって・・・ほら、欲しいんでしょ?とりあえずそのくそ汚い尻こっちに向けなよ」
舐めてあげるから。
男の手が、金の髪をひっぱる。
遊ぶようにして、指に絡めて。
ジージーと蝉の声。
頭がぼんやりと霞がかっていく。
「ああ?舐めさせて下さい、だろ?おら」
静雄は笑いながら体勢を変えて、男の顔のまん前に白くまろい臀部を突き出した。
期待に震える後肛が、ひくひくと物欲しげにわなないていることぐらい、自分でもわかっている。
男の熱い手が、汗で閉める肌を掴んで、指が其処をつついた。
濡らすものもなく、乾いたままの其処は、このままでは指一本すら飲み込むことが出来ない。
「はは。相変わらず物欲しげで・・・なのに慎ましやかだよね・・・まるで君そのものだ」
くだらないことを言いながら伸ばされた舌が、焦らすことなく其処を舐った。
くちゅり、唾液を纏って襞の一本一本を確かめるようにゆるゆると舐め弄る。
「くっ・・・ぅんっ・・・・・・」
びくりと躰が震えて、腕の力が抜けた。
興奮で荒い息の横、頬を男の象徴が触れた。
ぬるぬるとさっき静雄が喉奥まで迎え入れて濡らしたそれ。
期待に胸が震えて。
「はふっ・・・」
熱く息を吐き出す。
男の舌が静雄の秘蕾を受け入れるための性器に変えていく。
無遠慮な男の指が尻を揉んで、そんな刺激にも躰が震えた。
唾液を纏った男の指が、程なくして其処に沈められる。
「ぁあっ・・・!」
びりびりと背筋に電流が走った。
男は静雄の躰を知っている。
それはきっと静雄自身より。
荒い息を、どうしたら止められるというのだろう、草の匂いが、鼻先に香って、雄の匂いと混じって溶けた。
熱い。
熱くて。
容赦ない太陽が、静雄をどんどん追い詰めていく。
手の中の男にも、もうほとんど何をすることも出来なくて、ただ欲しかった。
「いざ、やぁっ・・・もぉ・・・!ほしっ・・・!」
懇願するように声を立てて、男を振り返った。
潤む目つきで誘って。
男が息を飲んで、静雄の下から躰を引きずり出して立ち上がった。
「あっ・・・はぅっ・・・」
くちゅくちゅと、下肢は男の指を飲み込んだままだ。
いつの間にか増やされた指は2本。
頬に砂が触れた。
臀部だけを突き出すような格好は、どうにもみっともないばかりだったけど。
「まだきついと思うんだけど・・・そんなに言うなら、仕方ないよね」
男も息を荒げているくせに、まるで静雄が強請るから仕方なくだと、恩着せがましい口調で言葉を繋いで、ぴたりと熱いそれを、抜いた指の代わりに其処に当てる。
ぬちゅと湿った音がして、何度か入り口を滑った後、ついに押し込められた凶器に等しい切っ先は熱い。
ただ、熱くて。
「ぁぁあああっっ・・・!!!」
背が仰け反って、高い声が上がった。
まだ、充分に解れていなかったのだろう、引き攣れるような痛みと熱を感じる。
だが、それすらずっと待ち続けていたもので。
意識さえ持っていかれそうな刺激に、目の奥がチカチカする。
「くっ・・・きっつ・・・」
歯を食いしばった男が、それでも強引に身を引いて、ついでずしりと腰を打ちつけた。
静雄の腰を掴んだ手に、きつく力が込められる。
「あぁんっ!」
ずんっと胎の奥が熱くなって、躰全部が焼けるようだ。
だらだらとこぼれる汗が、砂地を湿らせていく。
草の匂いと、蝉の声も遠く。
はじめはゆっくりだった抽挿が激しくなるのに、それほどの時間などかからない。
ぱしんぱしんと肌と肌がぶつかる音が絶え間なく響いて、静雄の喉から漏れる喘ぎも、どんどんと切羽詰ったものになっていく。
ずちゃずちゃと響く互いの体液の絡み合う音と。
ただ躰の熱だけが全て。
「あっ、あっ、あっ、あぁんっ・・・!」
静雄の唇からは、もはや意味のある言葉など漏れず。
熱に、全部が支配されていく。
程なくして向かえた絶頂は、一度ですむはずもなくて。
体勢を変えて、幾度となくつながった。
背中を草が擦って、はだけただけの上着は、どろどろに汚れてしまっているだろうけれど気にしてなんていられない。
男から滴った汗が、静雄の首筋に落ちた。
「ぁんっ・・・いざ、やぁっ・・・!」
求めて差し出した手は、違わず男に捕らえれて。
高い陽射しに、男の顔は逆光になってよくは見えなかったけれど。
満ちる雄の匂いと。
遠い蝉の声と。
熱と、痛みと、快感と。
落ちてきた男の唇から。
「んんっ・・・!」
与えられる口吻けに酔った。
まるで溶け出しそうな、暑い日に。
獣のように、混ざり合う。
それは、ただの日常。
頭が熱で満たされて。
掴んだ男の黒髪が、手指を擽っては指から離れた。
例えばそれは本当に。
なんでもないような、ことなのだった。
燦々と降り注ぐ、厳しいばかりの太陽の下で。
Fine.
>>無意味エロこの上ないwwww
(2011. 7. 1up)
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